vol.8
イイ歯医者さん

フリーインストラクター 森 みや子
歯が痛くなりました。

そこで知り合いに尋ねました。

― 「イイ歯医者さん、知らない?」 ―

 私が無意識に使った「イイ」とはどんな歯科医院でしょう。

 先生の腕がイイ?治療が痛くない?

 有名人がたくさん来るような治療費の高いところ?ではないことはもちろん、待合室が清潔にしてある、先生が優しい、タオルやコップ等の備品が清潔である、スタッフがにこやかで丁寧な応対をしてくれる…。

これら全てをまとめて「イイ歯医者さん」とイメージしているのです。」


― 「ある!ある!イイ歯医者さん。」 ―

と教えてもらったY歯科医院は、実に清潔感があふれていました。そして、何よりも先生も歯科スタッフもにこやかで親切です。面倒がらずに、どんなことでも説明してくれます。

 ここなら大丈夫かもしれない…、 永久歯が顔を出してきているのになかなか抜けない前歯を抜きに、いやがる娘を連れていきました。

 待合室まで出てきてくれたスタッフのお姉さんが、腰をかがめて、にこやかに話し掛けてくれました。

「なかなか抜けないの?アーンして。 これなら大丈夫。すぐとれちゃうワ!」

「痛くない?」と娘。

「ピリッとするくらい。 でも、アッという間だから我慢できると思うナ。」

10分後、娘は診療室のチェアの上でニコッと笑ってピースサインをしていました。

 このスタッフの方は「痛くないから」と嘘は言わず、ちゃんと娘にわかるように説明してくれたのです。忙しいスタッフの方にとっては、早くイスに座らせ、サッサと抜いてしまえば簡単なことです。それにもかかわらず、こんな応対をして下さったことが、どれほど娘の歯医者さんに対する印象を変えたことでしょう。


今、町に歯科医院はあふれています。

確実に患者さんが選ぶ立場です。 生き残っていくためには、患者さんの立場に立った “心のサービス”を考えることが大切で、 「待っていなくても患者は来る」と先生が落ち着いている時代 ではないのです。

 以前に通院していたHデンタルクリニックでは、いつも先生がスタッフを叱っていました。顔の上で行われる険悪なやりとりにいたたまれなくなったことを覚えています。そこのスタッフは皆さんいつも暗い表情でした。

 患者さんだけでなく、先生やスタッフの方もみんなが気持ちよく過ごすために、一人一人が相手の立場にたって、心からふれあえるといいですね。

温かい雰囲気は必ず患者さんの心に伝わり、信頼と安心をいだかせることと思います。でも、そんな歯医者さんは予約が一杯で、なかなか虫歯の治療を受けられないかもしれませんね…。