vol.7


選ばれる歯科医院
ここに来てよかった、次もここに来よう

(株)ロングアイランド
インストラクター 伊藤 純子
 先日、タクシーに乗ったときのことです。

 私が乗り込んだ座席の斜め前には、カゴがぶら下げられてあり、なかにいろんな種類のキャンディが入っていました。そのカゴには“どうぞ、ご自由にお召し上がり下さい。”と書かれていました。キョトンと見ていると、「よかったらそちらの飴、召し上がってください。持って帰って頂いてもいいですよ。」という気さくな運転手さんの声が聞こえて来ました。

「はい、ありがとうございます。」と言ってひとつ手に取りながら


「珍しいタクシーですね。」と話しかけると、
「いや〜、これは私の楽しみなんですよ。こうしていると、お客様と話すきっかけもできるし、何よりも皆さんが『ありがとう、このタクシーに乗れてよかったよ。』 子供までが、『おじさん、頑張ってね。』なんて言ってくれるんですよ。接客業でありながら、タクシーほど、偉そうにして、『ありがとうございました。』と言わない仕事も珍しいですからね。私は、やはり、接客業である以上、お客様に喜んでいただけて、またこの車に乗れたらいいな。と思っていただけるタクシーを目指しているんですよ。」とうれしそうに話してくれました。

 そういえば、今までにタクシーに乗ったとき、行き先を言っても返事をしない運転手さんに何度か出会うことがありました。聞こえていないのかと思い、繰り返すと、「わかってますよッ!」と投げ捨てるように言う人もいました。急ハンドルを切り、急ブレーキで止まると、降りようとする私の片足がまだ残っているぐらいで走りだして、思わずよろけてしまったという危ない経験をしたこともあります。ここまでひどい人も珍しいとは思いますが、どの場合も、「そんなにいやなら、やめればいいのに、こっちはお金を払っているのよ。」と言いたくなりました。

 雨の日や、夜になると、タクシー乗り場では長い列ができていて、必然的に、順番に乗り込みますから、こちらから相手を選べません。どちらかというと、この状況では、車の数が少ないために、優位になり、“乗せてやっている”なんて横柄な気持ちもでてくる人もあるようです。

 もし、これが逆だったら、そして相手を選んで乗ることができるとしたら、どうでしょうか。きっと、先ほどのようなマナーの悪い運転手は職を失ってしまうかも知れませんね。

 ところで、最近では、歯科医院の数が増えつづけているために、患者さんの側からも、どうしてもここしかないという状況はなくなりつつあります。

 つまり患者さんがどの歯科医院に行くか選べる立場にある訳です。ということは、接客業とは言わないまでも、やはり、人と接する仕事であるということを意識して行かなければ、経営にも影響を及ぼすということになります。

「先生の腕がいい」ということももちろん選ばれる大きなポイントですが、本当のところは、素人からは分かりにくいことで、やはり重要なポイントとなるのが、「親切である。丁寧である。感じ良い。」と思えることなのです。「同じ痛い思いをするのなら、少しでも、安心感の持てるところに、より気持ち良く過ごせるところに行きたい。」と考えるのは当然のことでしょう。 つまりそのカギとなるのが、皆さんスタッフの方々の患者さんとの接し方なのです。


患者さんには、いろいろなタイプの方がいらっしゃいます。

  約束に遅れてくる人、 わがままばかりいう人、 泣き叫んで聞かない子供、 分かり切ったことを聞いてくる老人 …というように、なかなか自分の思いどおりに行かないことは、多々あることでしょう。

 しかしそこで腹を立て、態度や表情に出してしまう人は、まさに“診てやっているのに”なんていう横柄な気持ちの表れであり、それは相手にも伝わってしまいます。

 あくまで患者さんあっての歯科医院なのです。

 相手に合わさせるのではなく、その人その人に合わせた対応をする器量と工夫が必要です。器量とは、皆さんの心の広さ、包容力のことです。例えば、スタッフにとっては、毎回同じことの説明で、飽きてしまったとしても、患者さんにとっては初めてのことかも知れません。薬の飲み方や、治療後の注意事項、場所の案内や誘導など、常に、相手の身になってみて分かりやすい、親切な対応を心掛けて頂きたいものです。

 “ここに来て良かった、次にくるときもここに来よう”そう思っていただけるような仕事ぶり、患者さんとの接し方をするように日々努力することが人と接する仕事に携わるものの基本ではないでしょうか。

余談ですが、私は、最近、いつもタクシー乗り場では、運転手さんの顔を見て、ふてぶてしそうな顔している人はパスして、次に乗るようにしています。

同じお金を出して乗るのなら、気持ち良く乗りたいものですね。