vol.5
あいさつ

株式会社 ロングアイランド インストラクター
菅田 京子
 年の瀬も近づき、街が賑わいを増しています。

 遠くに暮らす家族や知人に贈り物をする人で、デパートの中は熱気むんむん。コートの襟を立てて歩く季節だというのに、急きょ冷房を入れたデパートがあったそうです。繁華街や商店街を歩いていると威勢のいい掛け声があちらこちらから聞こえてきます。「いらっしゃい!いらっしゃい!」歯切れのいい元気な呼び声に思わず足を止めて店の中を覗き込み、また別の店員さんに「いらっしゃいませ、いかがですか?」と勧められついつい予定外の物を買って店から出てくると、“掛け声の店員さん”に「ありがとうございました!またどうぞ!」と笑顔で見送られる。あ、また買ってしまった……と少々後悔するという経験は誰にでもあると思います。自分の財布の管理能力を棚に上げて、あの時あの店員さんに声さえ掛けられなければ、などと怨みがましく思っても時既に遅しです。その時“店員さん”はあなたに絶妙のタイミングで実に効果的な一言をかけたことになります。「いらっしゃい!」の一言がその後のあなたの行動の流れを決定付けたと言っても過言ではないでしょう。それはまるでこれからあなたが“買いものをする”というクライマックスを迎えるためのイントロのように……。

〈いらっしゃい〉を辞典で調べると、

「居る」「在る」「来る」「行く」の尊敬語「いらっしゃる」の命令形、

1.おいでなさい
2.人の訪ねて着たときに挨拶に用いる語で、 よくいらっしゃいました
(岩波書店 広辞苑)とあります。

あなたは2人の店員さんのそれぞれの

第一声店頭で声をかけて店員さんからは1の用法で、実際に店に入って別の店員さんから2の用法で心を動かされたのです。


(1) この第一声とはまさに〈挨拶〉。クライマックスを迎えるためのイントロと前述しましたが、だからこそ後の“響き”にも影響を与えるのです。“挨拶"次第で次の展開は大幅に違ってきます。歯科医院で患者さんを迎え入れる時、みなさんの歯科医院はどのような挨拶をしていますか?以前一度かかったことのある医院で「いらっしゃいませ」と出迎えられたことがありますが、いくら丁寧でも医療関係で「いらっしゃいませ」は少々違和感があります。

 これは10人の知人に聞いて10人とも違和感があると言っていますので、効果的な一言とは言い難いですね。「いらっしゃいませ」は使わない方が無難でしょう。ではどんな挨拶が患者さんの心に快く響くのでしょうか。答えは簡単。朝であれば「おはようございます。」昼であれば「こんにちは。」夕方は「こんばんは。」です。ところがこの簡単な挨拶ができているようでできていない、しているつもりでも実は相手の心に全く響いていない、つまりしていないのと同じ状況の方が多いのです。簡単に思われる挨拶ですが、ただ“挨拶言葉”を口にするだけでは効果的な一言にはなりません。ここで“タイミング”が問題になります。〈挨拶〉という字には元々押し開くという意味があります。なるほど挨拶がコミュニケーションの第一歩というのもうなずけます。“挨拶”で相手の心の扉を押し開き次の段階へスムーズに進んでいくにはどうしたらよいでしょうか。ここで“挨拶”のチェックポイントをご紹介します。

あ い さ つ
アイキャッチ いつでも さきに つづける

 目と目があったら(目を見て)、 いつでもこちらから先に挨拶をしましょう。そしてそれを続けていきましょう。簡単なようでなかなか難しいものです。


(2)  患者さんが玄関を入ってきました。書類を見ながら気付かぬ振りで患者さんが声をかけてくるのを待っていませんか?気が向いた時だけ挨拶をしていませんか?きちんとした挨拶を続けていればそれは習慣になります。しだいに絶妙なタイミングが身に付き、余裕が出て来ると「おはようございます。10:00にご予約の○○さんですね。」と患者さんを安心させるプラスアルファも自然と出て来るようになります。スムーズなイントロはクライマックス(診療室への誘導や、その後の予約など)への流れを円滑にします。  まずは、歯科医院のスタッフ同志から始めましょう。

 通勤途中同僚を見かけたら、「○○さん、おはよう。」そして歯科医院に着いてロッカールームに入ったら、皆に向かって顔を見て「おはようございます。」と元気に明るく言いましょう。受ける側も顔を上げて、「おはようございます。」と明るく返答しましょう。歯科スタッフに要求されることは患者さんとのコミュニケーションばかりではありません。スタッフ同志のコミュニケーションも大切な要素です。スタッフ同志きちんと挨拶ができ、コミュニケーションがスムーズであれば歯科医院全体が明るく、てきばきとした雰囲気に包まれ、患者さんにも安心感を与えます。〈挨拶をあなどることなかれ〉です。

年末年始のご挨拶の季節です。年に一度の挨拶の前に 日頃の“挨拶”をもう一度 見直したいものです。